木の殿堂は、但馬・瀞川平の緑豊かな地に、日本の自然と文化の象徴ともいえる「森と海と太陽」をテーマとして1994年に建設されました(設計は安藤忠雄)。内部は日本の木造建築を代表する柱・梁で構成され、柱が高く垂直方向に伸びる空間は太陽の光を受けて成長する森の生命力を表現。さらに、建物の中心には生命の源である水をたたえた大きな池が配置され、その上方には青い空を背景に輝く太陽を仰ぎ見ることができるように設計されています。ここは、日本文化の原点である森や木のすばらしさを、さまざまな視点でとらえ紹介する自然学習施設。自然とふれあう数々の体験プログラムなども実施しています。
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建築は、直径46m円形リング状のプランをもち、その中央には直径22mの同じく円形の吹き抜けが空に向けて開かれています。その底部には、水が湛えられ池となります。この中心部は空と水が垂直に接続され出会う場であり、木の殿堂のテーマ「森と海と太陽」を強く表現しています。
博物館へは、森を横切る直線的アプローチによって導かれ、スロープの終端で直角に曲がり、建築に向かい直進します。そしてそのままリング状の空間を横断します。訪れる人々は自然の豊かさを湛える深い森、人間が創造する力強い建築に向かい合い、建築の中心に純化された空と水の間に身を置くことになります。あたかも自然と人間の文化の間を瞬時に行き来するように、精神と肉体が刺激を受ける体験となることでしょう。
周辺の森林に囲まれた天井高 16m のリング状の空間は、兵庫県産のスギでつくられた集成材の柱梁の架構によって支えられ、そこに木の文化を収めた展示室が設けられています。吹き抜けの空間に林立するこの集成材の柱と木組みの梁は、それ自体が、「木の殿堂」の理念をもっともよく伝える展示物となっています。
まるで森の中に迷い込んだような館内は、すがすがしい木の香と木漏れ日でいっぱい。展示室では、世界の植生帯の中から4つの森を選び、そこを代表する樹木をパネルにより解説。そして、その地方の個性豊かな民家模型や木製民具の数々を展示し、森や木から生まれた世界各地の文化や暮らしを紹介しています。
直線的なスロープは内部に入り、今度は旋回するスロープとなり展示空間を巡る。この「木の殿堂」では、1本のスロープが上昇、下降し、あるいは旋回しながら、人間の文化がつくり上げた空間を立体的に横断していきます。外部における周辺の自然環境と、内部における世界中の木にかかわる生活を連続的に結びつけ、ここを訪れる人々が、その体験の中で、木の文化、木に対する心、木と人間の関係を再創造していくことでしょう。
どうぞ、散歩気分でゆっくりとご鑑賞下さい。